初めて出会う、己の中にある多面性。“本当の自分”を探す迷宮にいるような創造コースは、段違いでおもしろい。
創造コースには、どんな先輩たちがいるの?
そんな疑問に答えていく生徒インタビュー!
今回は、創造コース2年生の紺谷 眞ノ介(こんたに しんのすけ)さんに話を聞きました!
創造コースにただいるだけでは変わらない
ーー紺谷さんは、どんなきっかけがあって追手門学院の創造コースを進学先に決めたのですか?
中学生の頃の僕は、できるなら学力が高いと思われたい、なるべくなら内面がかっこよくていい人だと思われたい…など、できるだけ自分を着飾りたいと思っていました。そんな自分になれそうな高校を両親と一緒に探す中で出会ったのが追手門学院でした。
数あるコースの中で創造コースを選んだのは、「ここに入ったら唯一無二の人になれるかもしれない」と感じたからです。
当時の僕は、人と違っていたいという気持ちが本当に強くて、自分は唯一無二の存在だと感じることで、自分に自信を持ちたかったんだと思います。そんな中で創造コースの体験会に行き、1期生の先輩たちが前に出て話す姿を見たときに、すごく印象に残ったんです。
誰1人緊張していないように見えたし、まるでカウンセリングをするような形で僕たち参加者一人ひとりと目を合わせてしっかりコミュニケーションを取る先輩たちこそ、唯一無二の存在に見えました。僕もこんな風になれるなら入ってみたいと思って、創造コースを選びました。
ーー実際に入学してみて、どんなことを感じていますか?
この1年半を振り返ると、とりわけ2つのことを感じています。
1つは、どれだけ支えられていても、最後は自分で決めて動かなければならないのだということ。もう1つは、本当の自分はどんな人間なのかを考えれば考えるほど、逆にどれが本当の自分なのかが分からなくなるということ。特に2つ目については、今もどれが自分の本当の姿なのかを模索しているところで、絶賛悩み中です。
でも、これら2つのことに気づけたことが、そもそも創造コースに入ったからこそ得られたものだし、だから創造コースは段違いでおもしろいと感じています。
ーー哲学的な気づきですね。まず1つ目の気づきについて、具体的にどういうことか教えてください。
はい。体験会を経て、僕も先輩たちのようにしゃべれる人になりたい、創造コースに入ってその環境に揉まれることによって、自然と先輩たちみたいに変わっていくものなんだろうなと思っていました。
でも創造コースに入ったからといって、全員が全員会話が得意になるわけじゃなくて、最終的には自分が動かないと始まらないケースがほとんどなんだということに気がついて。最初は創造コースが変えてくれるんだろうなと思っていたんですが、今では、最終的には自分で決めて動かないとダメなんだという考えに変わりました。
ーー何かそう考えるに至ったきっかけがあったのでしょうか?
担任の佐藤先生の影響が大きいかもしれません。佐藤先生は、クラスの全員に平等に機会をくれるような人なんです。機会をくれるというか、「こういう機会があるよ」というところまでを教えてくれると言った方が近くて、実際にその機会を生かすかどうかの最終的な判断は、自分たちに考えさせてくれるようなスタンスです。
そんな授業の中で、やっぱり最後は自分で「やってみよう!」と思わないことには変わらないんだな、ということを感じました。
まずは知ることから始まるという気づき
ーー2つ目の気づきである、「本当の自分について考えると、逆に本当の自分が分からなくなる」というのは、どういうことですか?
創造コースに来てから、自分自身のことについて考える機会がとても増えました。「こういうときに自分はこう感じるんだろうな」と推測できるようになったし、「こんなときに自分だったらどうするか」と考えるようにもなりました。その過程で、ふと自分の中に2つの対極な意見が存在していることを知りました。
例えば、僕はサッカー部に入っているのですが、自分の中に「僕はサッカーが好き。なぜなら運動が好きだから」という意見がある一方で、「僕は運動が好きとも言い切れない。なぜならそもそも運動をすることによって自分のマイナスな面が目立つことになるから」という意見もある。
客観的に見て、どっちの自分の方が他者から好印象を抱いてもらいやすいんだろうと考えていくと、結局どっちが自分が本心から思っていたことなのかが分からなくなってしまうんです。
自分の中に、相反する2つの面があることを認識し始めた今、その矛盾をどう捉えて、どううまく付き合っていけばいいんだろうという部分でぐるぐると考えているような状態です。まだ答えは見つかっていなくて今も絶賛悩み中ですが、考えているときの自分が一番、生き生きと輝いているという見方もできるのかな、と思います。
ーーそんな自分との対話の渦中にいる紺谷さんの、創造コースにおける好きな授業は何ですか?
公共や、昨年まであった歴史総合の授業がダントツで楽しく、好きでした。
歴史総合の授業では、例えばその偉人はなぜこうした行動をとったのかとか、この行動の裏にはどんな考えや意図があったのかといったことを、その人物の立場になって考えるような内容が多いんです。そこが創造コースの授業ならではのユニークなところかなと思います。
歴史や公共の授業には、圧倒的な悪人のような存在が登場しますよね。そういう人たちの行動だけ見たら、確実に「悪」だと捉えて全員が責めるのも分かる一方で、「悪」とされている側の理由や背景などを知ると、少し納得する部分があるというか、反対しきれない部分があることも事実だなという感覚があるので、そういうところでは共感してしまいます。
ーー印象的だった授業のエピソードがあれば教えてください。
去年の歴史の授業でパレスチナ問題を扱ったことがありました。まずパレスチナ問題について知った上で、何が一番の問題なのかを各々に探るという内容でした。この過程で、いろいろと考えましたね。
パレスチナ問題においても、圧倒的な悪人というのは存在しないけれど、相容れない2つの意見が存在していることは事実です。それまでの僕は、2つの意見があったときには、7:3なり6:4くらいの比率でどちらかにパッキリ2分割されるものだと思っていました。
でも、パレスチナ問題を知れば知るほど、そんな単純に決められないというか、どちらも悪くないよなと感じるようになって。でも、事態はマイナスの方向に進み続けている...。
事態の悪化を止めるならばどちらかは悪いと考えて謝らないとダメなんだろうな、と思う面もありますし、双方どこにどうやって進んでいったらいいか分からないという見方をすれば、今の僕自身と若干似ているのかな、と感じたりもしました。
ーーパレスチナ問題とご自身の状況を重ねて捉える視点がおもしろいですね。
最終的に僕は、パレスチナ問題というものを今の若者があまり認識していないことが一番の問題なのではないかという答えにたどり着きました。それというのも、「知らないことが一番の問題だ」という言葉に出会ったからです。
例えば僕は、自分が住んでいる市の課題すら認識していません。近隣地域が抱えている課題も知りません。でも、この地域の住民であるなら認識していた方がいいと思うし、きっとその課題に僕も間接的に関わっていたりもしていると思うんですよ。
その問題についてきちんと知っていたら、しっかり行動に移せるけれど、やっぱり知らないことによって事態は進行していくし、時間の経過によって悪化していくものもある。
パレスチナ問題も本当に同じだなと感じて、出会ったなら知ることから始めてみようという結論でまとめました。
多面性と付き合いながら自分の軸を探していく
ーー入学した頃の自分を思い返して、今の自分の変化をどう捉えていますか?
かつては、尖っていたい欲が強かったのに、今はだいぶ丸くなったような気がします。人と違う部分を追求するよりも、人の良い部分を探そうとしている自分がいます。
自分のことが嫌いだという人は、自分の良い部分に気づけていないからではないか。ならば、全員の良い部分に気づいたら、全員のことを好きになれるんじゃないか。そこに気づけた瞬間から、人の良いところは、見ようとしたら見えてくると思うようになって、少しずつ、丸くなってきたんじゃないかなと思います。
ただ、自分のことに関しては、自分が思っていた自分の良い部分が、創造コースの多様性の中で見れば良くない部分とも言えるんだなということに気づかせてもらいました。
そうした「良い面」「悪い面」というのは、場面によって変わるし、人によっても変わります。この人から見たら、この部分は良いけど、この人からしたら全然そうは見えないといった具合に、多面性があるんだということを身に染みて感じるようになりました。
ーー創造コースで過ごしているこの1年半だけで、紺谷さんの中でこれまで認識していなかった自分との出会いを通して、大きく価値観が揺さぶられるような体験をしていることが伝わってきます。最後に、これからの目標を教えてください。
考える前に、動ける人になりたいですね。
これまで、僕は「動けるけれど、敢えて動かない」だけなんだと思っていました。そういうスタンスが、なんとなく逆張り的な感じでかっこいいかなと思って。
でも、創造コースに来て、「自分は敢えて動かないんじゃなくて、動けなかったんだ」ーーそう自覚した瞬間に、自分自身が小さい人間に思えて、ガッカリしたという言葉では足りないくらい自己肯定感が下がりました。だからこそ、普段から考えながら、相手や状況に対して、その都度適切なコミュニケーションができて、即興的に動ける柔軟性を持った人間になりたいです。
ちなみに僕から見た創造コース生は、普段から当然に発揮できるような行動力を兼ね備えている人たちに見えていて、自分にないものを持っている皆をすごいなと思いますね。
幸い、創造コースには先生をはじめ、悩んでいるときに助けてくれる仲間がたくさんいます。聞く人によって違った答えが返ってくる中で、何を正解とするかしないかは僕次第。まずはきちんと受け取りながら、自分の軸を模索していきたいと思います。