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教員である僕も、等身大の自分で。創造コースは、自分たちの手で創っていく「自分が見つかる場所」

創造コースの先生って、どんな先生がいるの?

そんな疑問に答えていく先生インタビュー!
今回は、創造コース1年生の担任・佐藤佑平先生に話を聞きました。


先生にだって悩みも苦手もあることをオープンにしていたい

ーー佐藤さんは教員になって5年目とのこと。新任の頃から追手門学院にいらっしゃるそうですね。学校の先生にはもともとなりたかったのですか?

僕が「学校の先生になるのもいいな」と思った最初のきっかけは、高校時代の担任の先生の印象が良かったことでした。その後、大学から大学院にかけて数学を専攻し、数学者になる道とも迷ったのですが、最終的には教員になろうと決めて、新任で追手門学院に来ました。

追手門学院を見つけたのは本当にたまたまで、求人を調べていて最初に表示されたのが追手門学院だったから(笑)。でも意図しない縁に導かれてこの学校に来ることができて、本当に良かったと思っています。

ーー教員になったばかりの頃と比べて、この5年間で感じるご自身の変化はありますか?

教員になったばかりの頃は、自分の中での一種の正解というか、「教える立場としてこうあるべき」という先入観に縛られていました。目の前のことに手いっぱいで、いろいろなことを考える余力がありませんでした。

でも今は、自分にもできないことがたくさんあるし、生徒たちと同じように悩みも抱えているし、それをむしろ生徒たちにもオープンに見てもらい、知っていてほしいと思うようになりました。

自分の中にあった「あるべき教員像」が払拭され、もっと自由に、ありのままの自分で生徒たちに近い立場から接することができています。

-ーどのようなきっかけがあって佐藤さんの価値観がそのように変化したのでしょうか?

きっかけは、「数学」と「総合的な探究の時間」、両方の授業を担当させてもらえたことが大きかったと思います。

教員1年目は数学も探究も1年間かけて自分なりの授業スタイルを固めていくような年でした。2年目になって自分自身に少し余裕ができてきたこともあって、2つの授業の作り方や進め方を比較してみたんです。すると、両者で全然スタイルが違って。

探究の授業は、教員も含めて自分の悩みや葛藤もさらけ出していて、生徒との距離感が近いなと感じたんですよね。僕はもともと、決められた枠組みの中で1つの正解を出すというのが嫌いなんですが、そういう授業を数学ではしてしまっていることに気がつきました。

それ以来、学習する内容がある程度決まっている数学の授業でも、どうすれば探究的な要素を取り入れてアレンジできるかを考えるようになりました。

生徒たちには答えが見つけられないような問いを投げて、「答えを出すことが目的じゃないよ」と伝えています。これは1年目のときにはできていなかった問いかけでした。

時間を無駄に過ごしていた高校時代。先生が学校の魅力を教えてくれた

ーー今は探究の授業をデザインする立場にもあると思いますが、佐藤さんが探究の授業づくりで大切にしていることはどんなことですか?

探究の授業は、まず学年の生徒約500人全員のリフレクションを読むことから始めます。

僕がメインで担当している高校1年生は13クラスありますが、1週間で授業に入れるのはそのうちの4クラスだけ。他のクラスの様子が全然見えないので、各クラスの状態や生徒一人ひとりの様子を把握するためにも、生徒たちが言語化してくれたリフレクションの内容は必ず全て目を通すようにしています。

その上で、こういうことに気づいてほしい、こんなきっかけを作れないか…など、試行錯誤しながら授業のイメージを膨らませていきます。

同じ授業をしていても、クラスによって捉え方が違ったり、示すデータも変えたほうがいいことがあったりするので、そうした準備があることで、授業を進めていく中での言葉の選び方や間の取り方、問いかけ方、ワークを入れるか・入れないかなど、細かい部分が変わってきます。ここは結構こだわっているポイントですね。

ーー創造コースがスタートして1年半が経ちました。これまでの創造コースにおける生徒たちとの関わりの中で、印象的だったことはありますか?

プロジェクト期間中に、創造コースの同僚の先生と一緒に、毎日夜20時頃まで学校に残って生徒たちのメンタリングをしていました。この生徒たちとのメンタリングの時間が、僕の中では深く印象に残っています。

一人20分程度の時間ですが、じっくり話すことで、だんだんとその子の考え方や思考が整理されていく過程が見て取れて、最終的には僕の想定を超えた成長が見られることがありました。

一人20分の時間を約30人分費やすのは、一見すると非効率に見えるかもしれませんが、メンタリングの時間は削れないし、削ろうと思わない尊い時間です。

ーー佐藤さんは生徒たち一人ひとりにじっくり向き合うスタンスを大切にされているのですね。

確かに、生徒たちに時間をかけることをすごく大事にしています。それはなぜかと遡って考えてみると、私が高校2年生のときに親身になってくれた担任の先生の影響が大きいような気がしています。

高校1年生の頃の僕は、学校に行く意味を感じられなくて、ダラダラと時間を無駄に過ごしていました。遊んでばかりいましたが、学校のテストなどはそれなりに点数が取れていて。でも高校2年生になったとき、数学で全然分からない単元にぶつかり、初めて分からないことが悔しいという気持ちになりました。

ちょうどその時の担任の先生が数学の先生で、壁にぶつかっている僕を見て、先生の方から声をかけてきてくれました。そこで初めて、先生という存在に頼ってみたんです。

それまでは、大人に対していいイメージがなかったのですが、その先生は本当に僕のために面談をするなどして時間を割いて、寄り添ってくれました。それ以降、学校にいる意味を少しずつ見出せるようになって、自分の中の大人像、先生像が大きく変わりました。

僕が高校生の頃と比べると、今は学びの機会がたくさんあります。「あの時にもっとこれをやっておけばよかった」という後悔が少なからず僕の中にはあって。今の生徒たちには僕と同じ後悔はしてほしくない。なので、できる限り僕も生徒たちと向き合う時間を多くつくって、多様な気づきのきっかけを提供したいと思っています。

自分らしくいられる環境を、自分たちで創っていける場所

ーーところで、佐藤さんは生徒の皆さんから「ゆうちゃん」と呼ばれているそうですね。また、創造コースではクラスの仲がとても良いと聞きます。こうしたコースの空気は、どのように作られていったのでしょうか?

特に秘訣はないし、僕たち担任がそれを「作っていった」という感覚はなくて、「できあがっていった」という感覚です。

でも、年度初めの生徒たちは本当にガチガチに緊張していました。なので、最初に「5秒似顔絵」というアイスブレイクに取り組んだことで、打ち解けることができたと思います。

僕の呼び名については、創造コースがスタートした初日に、生徒たちには「僕を先生と呼ばないでほしい」と伝えました。「先生」という言葉が入ると、意識していなくてもお互いに上下関係のような関係性になってしまうのが嫌で。驚いたような表情をする子もいましたが、翌日教室に行ったら、皆から「ゆうちゃん」と呼ばれるようになっていました(笑)。

ーーアイスブレイクが効果覿面だったのですね。ちなみに「5秒似顔絵」とはどんなことをするのか気になります。

ペアになって向き合って、最初の20秒は何も話さずただじっと相手の顔を観察します。その後、たった5秒間で似顔絵を描きます。ただしこのとき、手元は見ずに、相手の顔を見続けるというルールです。

当然、福笑いのようなおかしな絵ができあがって、お互い笑いますよね。そのペアワークを3人ほど相手を変えてやって、その後グループになって、描いてもらった絵の中から自分らしさを一番感じたものを選んでその理由と共に自己紹介をする、というワークでした。

最初の1週間は、ずっと何かしらのアイスブレイクをしていましたね。当校には年度初めに面談週間というものがあり、通常50分の授業を45分にして放課後に個別面談するような時間を設けるのですが、僕はそこで個別面談よりもクラス全体でアイスブレイクすることを選び、毎日違うアイスブレイクをしていました。

半ば強制的に人と関わり続ける機会を、最初の1週間はつくり続けました。でもそれもきっかけに過ぎなくて、きっかけをポジティブに捉えられるというのは生徒たちのすごいところだと感じます。

生徒たちが「今は人と関わる時間なんだ」とポジティブに捉えてくれたからこそ、良い雰囲気がすぐに出来上がったんだと思います。

ーー最後に、佐藤さんにとって創造コースがどんなコースなのか聞かせてください。

生徒たちを見ていて思うのは、「自分が見つかる場所」なのかなと感じています。

創造コースは何か一つの分野、例えばスポーツだったり芸術だったりに特化しているわけではなく、大会で優勝するといった、皆に共通したビジョンがあるわけでもありません。それがむしろ良いところなのかもしれませんね。

実際に、2期生たちにコースの志望理由を聞いてみると、多くの子が「自分を変えたかったから」とか「自分を見つけられそうだと思ったから」と書いていました。

僕たち教員も、与えたり作ったりすることは最小限にしていて、できる限り生徒たちに委ねるようにしています。個性が尊重される場なので、安心して自己開示できて、自分の中のモヤモヤを解消しながら、自分らしくいられる場所を自分たちの手で創っていける、そんな環境なんじゃないかな。

「自分を見つけたい」という思いを抱えている人たちには、ぜひ来てもらえたらなと思います。

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