
創造コースで見つけた、「私の真に進みたい路」。積み重ねた全ての経験を生かして掴んだ、立命館大学・映像学部への切符
生徒の世界を広げ、深め、創造へとつなげる追手門学院高校独自の「創造コース」。プロジェクトの学びを中心に、生徒たちは自分の世界を最大限に表現し、創造に挑む3年間を過ごします。
そんなひときわユニークな学校生活を送ってきた創造コース生たちは、どんな進路を選んでいるのでしょうか?
今回は、創造コースの記念すべき第1期生として、2025年3月に卒業を迎える荻野夏帆さんに話を聞きました!
立命館大学の映像学部で、プロデュース・マインドを学びたい!
ーー荻野さんは、創造コース1期生として2025年3月に卒業を迎えますね。どんな進路に進むのか、教えていただけますか?
私は立命館大学の映像学部に進学します。一言に映像といっても、映画やCG、ゲームなど、さまざまな分野がありますが、立命館では1年目にそれらの映像関連分野を幅広く学び、2年目以降に自分の興味に合わせて専門的に学べる仕組みになっていて、その柔軟なカリキュラムに惹かれました。
2024年に茨木キャンパスに移転したばかりで、設備もとにかく充実しているんです。キャンパス内には映画館や巨大なスタジオがあり、照明や撮影機材も最新のものが揃っている点も魅力的でした。

ーーなぜこの学部に行きたいと思ったのですか?
私は小学生の頃から外部の劇団に所属し、追手門学院でもダンス部でダンスに打ち込んできたこともあって、もともと芸能界に興味がありました。母から「芸能界に興味があるならAD(アシスタントディレクター)を目指してみたら」と勧められたこともあります。ただ、ADになるには有名大学を出ていないと厳しいという記事を見て、「現実的には難しいかもね」と1年生の頃に話していたんです。
そんな中、母と梅田を歩いているときに「立命館大学の映像学部が茨木キャンパスに移転します」という広告が目に飛び込んできて、興味を持ちました。それをきっかけに調べてみると、映像学部では単に映像制作だけでなく、監督業やプロデュース業についても学べることを知り、「ここに行きたい!」という気持ちが高まりました。
特に、ダンス部や劇団での経験がプロデュースの仕事への興味を後押ししました。例えば、卒業公演のパンフレット作成やスケジュール管理、照明の調整、音源編集など裏方の仕事を一通り経験し、外部劇団では公式SNSに投稿する広報の役割も任されていました。
こうした経験から、「パフォーマーとしての視点」と「裏方としての視点」を兼ね備えていることが、自分の強みだと感じるようになったんです。

映像学部ではその両方を学べるため、「自分にとって一番しっくりくる選択だ」と感じました。ただ、創造コースでは勉強に特化した生活をしていたわけではなかったので、「本当に行けるのかな」という不安もありました。
それでも、3年生になる頃には他の芸大も視野に入れつつ、心の中では立命館を第一志望として固め、夏休み明けには「ここで自分の夢を叶えたい!」と強く思うようになりました。
「卒業プロジェクト」で確信した、私が真に目指したい道
ーー創造コースでは、いつ頃から進路の方向性を意識する流れになっているのでしょうか?
1年生の頃は進路を考える機会はほとんどありませんでしたが、2年生になると面談の回数が徐々に増えていきます。そして、3年生では「追手門モジュール(OM)」というロングホームルームの時間が設けられて、その中で先生と1対1の進路面談が行われ、本格的に進路について向き合うようになります。
OMでは1週間に5人ずつ面談が進むため、順番が回ってくるまで少し時間はかかりますが、先生は「その子の話が一区切りつくまで」時間をかけて向き合ってくれます。一回で話が終わらない場合は、「また明日続きをやりましょう」と、最後までじっくり対応してもらえました。
面談中、他の生徒は各自で課題に取り組んだり、志望理由書を作成したりと、進路に向けた準備の時間として活用していました。
ーー荻野さんが実際に進路について考え始めたのはいつ頃ですか?
3年生の6月頃まではダンスを続け、劇団の活動や外部の舞台にも参加していたため、進路について考えているようで考えていないような状態でした。
ただ、2年生の時点で映像系かダンス系のどちらかに進むと決めていたので、あとはどの大学にするかを絞る段階でした。本格的に「受験生だ」と意識し始めたのは、3年生の夏休み後半からだったと思います。

ちなみに、私は勉強が本当に苦手で受験勉強を避けたかったため、AO選抜入学試験(総合型選抜試験)方式に絞っていましたが、創造コースには一般選抜試験を選ぶ人もたくさんいました。一般選抜試験を目指す人たちは5月頃から塾漬けの生活をしている子が多かったです。
ーー映像系かダンス系かで悩んでいたのですね。進路決定に影響を与えた創造コースでの学びや経験はありましたか?
進路を確定するきっかけとなったのは、「卒業プロジェクト」でした。このプロジェクトでは、「私のダンス人生」をテーマに、5歳で始めたタップダンス、憧れの存在と出会い始めたストリートダンス、そして高校ダンス部で仲間たちと踊った日々までを、「映像・言葉・身体表現」の3つを用いて表現しました。感謝の気持ちを伝えたいという想いを込めて制作した約10分の作品です。

振り付けから音源の編集、背景映像の作成まで全て一人で手掛け、この作品を通して「これが自分のやりたいことだ!」と確信しました。プロデュース的な要素も学べる映像コースを選ぶ決意が固まった瞬間でした。
創造コースで積み重ねてきた経験を、全て発揮できた試験本番
ーー荻野さんはAO入試(総合型選抜入試)に絞っていたとのことですが、この入試形態については理解はありましたか?
はい。創造コース進学前の説明会や体験会、個人面談で「総合型選抜」という入試形態について説明を受けていましたし、創造コースでの学びとの相性が良い入試方法だとも教えてもらいました。
ーー荻野さんが受けたAO入試は、どんな内容だったのか気になります。差し支えない範囲で教えてください。
私が受けたAO入試は、一次試験で志望理由書と物語制作の課題を提出し、二次試験では当日出されたお題をもとに、与えられた時間内で物語(写真作品)を創作し、最後にプレゼンで発表するという内容でした。
物語制作の課題では、よく知られている物語の“その後”のストーリーを決められた文字数で書き、その中で最も印象的なシーンを1枚の写真に収めて提出するというものでした。
課題に取り組む際は、まず題材となる物語を徹底的に調べて、創造力を働かせながら短期間で集中して進めました。その1カ月間は、物語を本当に深く探究した時間でしたね。
ーー従来型の、学力重視の一般受験とは全く異なりますが、このAO入試の内容を知ってどう感じましたか?
試験内容を聞いたとき、「これなら得意かも!」と感じました。創造コースで取り組んできたプロジェクトがそのまま生かせると思ったからです。
創造コースでは、本心に向き合ったり、とにかく調べたりする「深掘りする力」を磨いてきました。また、「探究」の授業では「1時間で作品を作る」といった時間制限のある課題に取り組むこともあり、まず動いてみるという姿勢が自然と身についていたんです。
プロジェクトや探究の授業で3年間鍛えられてきたおかげで、「1時間で撮影する」「1時間で物語を作る」という試験形式にも自信を持って挑むことができました。
試験対策では、特に「お題に合ったタイトルをつける」練習が印象に残っています。創造コースの先生から「物語の内容をそのままタイトルにするのではなく、テーマや雰囲気を抽象化して考えて、食べ物や色など、一見、無関係に見える要素を取り入れてみたらどう?」とアドバイスを受けて、意外性や創造性のあるタイトルを考える練習をたくさんしました。

例えば、「友情」をテーマに友達との仲直りを題材に書いた物語では、「噛めば噛むほど味が出て関係が深まる」という意味を込めて「チューイングキャンディー」というタイトルをつけました。こうした練習を通して、物語を多角的に捉え、新しい切り口を見つける力が鍛えられたと思います。
創造コースで積み重ねてきたこれらの経験を、試験本番で全て発揮できてよかったです。
ーーちなみに、創造コースには定期テストがないそうですが、本当に大学受験を乗り越えられるのか、不安はありませんでしたか?
受験勉強をほとんどしていなかったので、「大丈夫かな」という不安は少しありました。でも、それ以上に「勉強はしたくない」という気持ちの方が強かったんです。
私はもともと「今を楽しむ」タイプで、自分の好きなことには一点集中して真剣に取り組める自信がありました。だからこそ、「なんとかなる、大丈夫」と自分を信じて、深刻に悩むことはありませんでしたね。
とりあえず挑戦してみて、「自分のこだわり」を見つけてほしい
ーー創造コースでの学びを通して、荻野さん自身が成長したなと感じた部分はありますか?
自分の「できなさ」に気づいたことが一番の成長だと思います。中学までは比較的自分に自信があったのですが、創造コースで自分より上手な人たちを見る機会が増え、自分に足りない部分や苦手なところが明確に見えてきました。その結果、自信を失う場面もありましたが、それがむしろ成長のきっかけになったと思います。
「苦手を見つけて改善する姿勢」や「できないことに挑む努力」は、創造コースを通じて自然と身につきました。これはダンスを通して培った部分でもありますが、創造コースの学びでさらに深まったと感じています。
また、プロジェクトのたびに「このプロジェクトは自分にとってどんな意味があったか」や「何を感じたか」といったリフレクションを求められ、それが自分を深く見つめ直す機会になりました。
創造コースの皆は、自分の考えを言葉で表現する力がすごいんです。他の人が書いたリフレクションを読んでいると、「こんな視点もあったんだ」と気づかされることがたくさんあって、他者の価値観や考え方に触れることで自分の視野が広がると同時に、自分自身についても深く考えるきっかけをもらえたと思います。
ーー3年間学んでみて感じる創造コースの特徴や強みはどんなところだと思いますか?
未知の世界や価値観、新しい感覚と出会えること。新しいことにどんどん挑戦できることが創造コースの一番の魅力だと感じています。創造コースは、これまでの「学校」の常識を壊し、全く新しい形で学びを提供する場所です。普通の学校では当たり前とされていることが、ここでは全然違う形で行われているので、毎日が新鮮でした。
例えば、私が通っていた公立中学校では全員が前を向き、教科書に沿った授業が中心でしたが、創造コースでは机が班ごとに配置され、グループワークが基本。質問に答えるときも、いきなり指名されるのではなく、一度グループで話し合った後に発言するスタイルが主流です。そのため、意見交換やコミュニケーションの時間がしっかり設けられ、自然と会話が増えることでお互いの関係性が深まるのを感じました。
また、授業自体も教科書通りではなく、そこから発展していく自由度の高い内容が多いのも印象的です。数学以外の授業では教科書をほとんど使わないことも多く、自分自身について深く考えさせられる場面が多かったです。
ーーそうした授業で、AO入試で重視される能力が培われてきたということですね。大学では、どんなキャンパスライフを送りたいですか?
将来の夢は、自分にしかできないライブパフォーマンスをプロデュースすることです。映像制作やアーティストとの連携を通じて、ライブの構成から企画まで全てに携わりたいと思っています。
その夢を実現するために、大学ではまず人脈を広げたいです。同じ学部の仲間だけでなく、他学部の学生とも積極的に関わり、多様な価値観やスキルを持つ人たちとの繋がりを大切にしたいと考えています。
ーー荻野さんの夢を応援しています!最後に、これから創造コースで学びたいと考えている人や在学する後輩にメッセージをお願いします。
創造コースでのプロジェクトや学びは、中途半端に取り組んでしまうと、何も得られないと思います。それでは「ただの少し変わった学校生活」で終わってしまうので、興味がないことや「なんでこんなことをやるんだろう?」と思うことでも、とりあえず全力で取り組んでみてほしいです。
そうすれば、必ず将来や進路選びに役立つ経験になります。私自身、何気なくやってきたことが全て一本の線となって今の進路に繋がっています。だからこそ、「とりあえずやってみる」ことを大切にしてほしいです。

さらに、「自分のこだわり」を持つことも必要だと思います。「ここだけは譲れない」というポイントを見つけると、さらに自分を成長させられるはず。ただ、こだわりは誰もが最初から持っているわけではなく、こだわりがない人もいると思います。だからこそ、こだわりがないなら、それを見つける努力をしてほしいですね。
こだわりは、全力で取り組む中で自然と見つかるものです。私もダンスを始めたばかりの頃はこだわりなんてありませんでした。でも、憧れの存在を見つけ、本気で取り組むようになってから、細かい部分が気になり始めました。
全力で取り組んで、周りの人と自分を比べてみると、こだわりが見つかることが多いと思います。「この人はここが得意なんだな」と他人の強みを見つける中で、「でも、自分はここは負けていないかも」と思える部分が出てくる。そうやって、自分の強みやこだわりが見つかるのではないでしょうか。