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歴史を仕事にできる職業に就きたくて、社会科の先生に。多種多様な刺激のある創造コースは、自分の興味関心と出会い、深めていける場所

創造コースの先生って、どんな先生がいるの?

そんな疑問に答えていく先生インタビュー!
今回は、創造コースの歴史総合の授業を担当する奥 允孝先生に話を聞きました。


青春の日々と歴史の奥深さに触れていたくて教員になった

ーー奥さんは、なぜ教員の道に進もうと思われたのですか?

高校生の時点で、学校の先生、特に社会科の先生になりたいと思っていました。それには理由が2つあって、一つは、もともと学校の部活動というものがすごく好きだったこと。中学時代はバスケットボール、高校時代は少林寺拳法に打ち込んでいたのですが、そのときの青春感をずっと感じていたいなという思いで教員になろうと決めました。

もう一つは、社会、とりわけ歴史が好きだったこと。歴史を仕事にできる職業って何だろうと考えたときに学芸員という道もあったのですが、学芸員は狭き門だと聞いていたので、それならば学校の先生になって歴史に触れていようという気持ちでした。

ーー仕事にしたいほど歴史(社会)が好きだったのですね。どんなきっかけで歴史が好きになったのですか?

大元をたどると、漫画を読むのが好きだったんです。でも小学生の頃は、親にあまり漫画を買ってもらえなくて...。家にあった『まんが日本の歴史』をひたすら読んだり、図書館に行って学習漫画を片っ端から読んだりしていたら歴史にハマっていました。それが小学4年生くらいの頃のことです。

次第に歴史に縁のある土地や建物や発掘物など、本物を見に行くことも好きになり、旅行が趣味にもなりました(笑)。

お話を聞いた 奥 允孝さん

ーー旅行もお好きなんですね。

本や漫画をいろいろ読んだり調べたりしていると、その場所や物にどんな価値があるのか、なぜ重要なのかが分かるようになってきます。そうなると、今度は実際に見に行きたい!という気持ちが高ぶるんです。

高校生の頃は、「この場所を見に行きたいな」と思いながら日々社会の授業を受けていました。そんな学校生活の中であるとき、社会の資料集に載っている写真に自分も写り込んだものを授業で投影したら、めちゃくちゃおもしろいんじゃないかと思いついた瞬間がありました。よく長期休み明けに、教室のモニターを使って休み中どこに行ったかを紹介してくれた先生がいて、あんなイメージで毎回の授業にそういう写真が使われたらおもしろいと思いました。

実際に行動に移したのは大学生になってからですが、それ以来、資料集で見つけた写真に付箋を貼って、実際に周遊していくような旅行をずっとしています。

多様なインプットから、自分の意見を作り判断する力をつけてほしい

ーー奥さんは、創造コースでは現在1年生の歴史総合を担当していらっしゃるとのこと。どんな風に授業を作っているのでしょうか?

授業を作るにあたっては、博物館の企画展からインスピレーションを得ることが多いです。私自身、資料集を見るのも好きなのですが、資料集に載っている内容が立体的に展示・発表されている歴史博物館という場所も大好きで、企画展にもよく足を運びます。

展示を見ていると、「なるほど、こういう発表の仕方があるのか」「こう見せるとわかりやすいな」など、さまざまなアイデアが得られます。

例えば、最近観ておもしろかったのが、「鎌倉時代の武士とは?」をテーマにした企画展示です。

鎌倉時代の武士は軍隊としての側面以外にも別の側面があったのではないか、という問いから展示が始まります。武器を持って戦う武人としてだけではなく、政治家でもあり、お寺を保護する宗教家でもあった。そうしたさまざまな側面から、市井の人々から信用を積み重ねていたのではないか、という内容で、興味深かったです。

そんな風に、生徒たちが何か問いを設定して、その問いに沿った展示方法を生徒たち自身が考えて、形にできたらおもしろそうだなという思いで今授業を組み立てています。

ーーおもしろそうですね。具体的に現在進行形で取り組んでいるプロジェクトなどはありますか?

今取り組んでいるのは、生徒たちによる、次世代の子どもたちに向けた道徳の教科書作りです。

王様や貴族や一部のエリートによる政治ではなく、フランス革命やアメリカ独立戦争など一般民衆たちが政治に参加するようになった世界の動きを取り上げて、国民国家として有象無象の民衆がどうやって団結してきたか。そこで大事だったのが教育だったんじゃないか。そんな話を授業でした後で、では現代社会に目を向けて、日本の教育基本法を君たちがどう解釈して、君たちより下の世代の子どもたちにどんな力を身につけさせたらいいのか。それを考えた上で、次世代を生きる子どもたちの新しい道徳の教科書を作ってみようというプロジェクトに取り組んでいます。

ーーアウトプットの形がユニークですね。そうした授業を通して、生徒たちにどんな力を身につけてほしいと考えていますか?

アウトプットに注力した授業ができることが創造コースの特徴なので、私自身いろいろと試行錯誤をしている中ではありますが、やはりインプットが十分に無ければ、アウトプットも十分にできないという思いがすごくあります。

その上で、私が担当する歴史という領域で何ができるかと考えると、歴史的背景を踏まえながら、歴史の知識を学んだ上で、現代社会の中で一般化してみて他の物事も考えてみる、というアプローチなのかなと。

実際に生徒たちにも熱が入ると感じるのは、生徒たちが自分の考えを持ち、意見を出し合っていくような授業のときです。歴史という題材を通していろいろな情報や知識を仕入れた上で、自分の意見を作って判断する力をつけてもらえたらと思っています。

知的好奇心旺盛な人の輪の中で、多様な刺激を受けてほしい

ーー工夫を凝らした授業に対する生徒たちのリフレクションからは、どんな声が聞かれますか?

モノの見方が変わったという声や、ものごと一つひとつに疑問を持つようになったという声を聞きます。

日々の中でさらっと過ぎ去ってしまうことも、「これって何でだろう」と考え、自分で調べてみるという変化をしている生徒もいます。授業でインプットしたものを、家族旅行で実際に足を運んで本物を見てきました!と報告してくれる生徒もいて、そんな話で盛り上がったりすることもありますね。

ーー生徒たちにもじわじわと変容が見られる様子なんですね。一般コースの授業も受け持つ奥さんから見て、創造コースの生徒たちはどんな特徴を持った人が多いですか?

知的好奇心がすごく強い人が多いかなと思います。何にでも興味を持って前向きに取り組む姿勢には感心します。

先日も、とあるプロジェクトで平城宮を復元している場所に行き、その復元過程を実際に見る機会がありました。僕にとっては好きの塊のような場所ですが、興味がない人にとっては全くおもしろくもなんともない場所だと思うんです。でも多くの生徒たちが、前向きに、しっかりと展示を見ていました。今は興味が無いかもしれないけれど、ちゃんと情報を受け取ろうという姿勢はすごくあるのだと感じましたね。

また、友達が興味を抱いている物事に対してリスペクトの姿勢を持っている人も多いように思います。友達がおもしろがっているものについて、私もやってみようかな、見てみようかな、と偏見なく受け取っている印象ですね。

ーーお互いに尊重し合っているような環境があるのですね。最後に、奥先生から見て創造コースはどんなコースか、教えてください。

創造コースは多種多様な方面から刺激をもらえる、良い環境だと思います。今は特に好きなものがない、見つかっていないという人でも、周りの友達や先生がいろいろなことを共有してくれるので、その中から自分の軸になるものや好きなものを掴みやすい環境なのではないでしょうか。

また、既に夢中になれるものが見つかっている人にとっても、自分の好きなものを違う尺度から捉え直して、さらに深めていけるような刺激をもらえる場所なんじゃないかなと思います。