個性を隠したり内気で否定的な自分から脱却。創造コースは、自分の興味や強みを伸ばせる恵まれた場所
創造コースには、どんな先輩たちがいるの?
そんな疑問に答えていく生徒インタビュー!
今回は、創造コース2年生の木谷徠人(きたにらいと)さんに話を聞きました!
自分の成長が実感できる、恵まれた環境
——木谷さんにとって、創造コースの毎日はどうですか?
とにかく創造コースに入って良かったと、ずっと思っています。挑戦的なカリキュラムや学外のおもしろそうなイベントを先生方が提示してくれたり、先生のお話も身になるものが多くて、刺激的な毎日です。
入学してすぐの頃は、とにかく楽しくてワクワクしていました。大きなプロジェクトや行事の度にリフレクションの機会があり、自分の成長を実感し始めたあたりから感じ方が変わっていきました。今は本当に恵まれた環境だと感じています。
授業の課題やプロジェクトの準備が忙しすぎて大変だと思うときもあるけど、今の自分があるのは創造コースのおかげなので、そんな大変なところも含めて大好きです。
——どんなことがあって、自分の成長を実感したんですか?
1年生の夏に、茨木市が開催する「高校生リーダーキャンプ」に参加したんです。青少年野外活動センターに市内の高校生が集まって、チームで課題に取り組みながらリーダーシップを学ぶという3泊4日の企画でした。
もともと僕はあまり前に出るタイプではなくて、そういうイベントに参加するのはあり得ないことだったんですけど、このときは自分の興味に突き動かされて参加しました。
ただキャンプをするのではなくて、キャンプ場を華やかにするためのオブジェを作ったり、みんなで生活するためのルールを作ったり、自分たちで何かをゼロから生み出すという活動をしました。これが、自分の中で一番光った体験でした。
そのような体験から、こういう挑戦的なプログラムに参加するのが楽しいと感じて、興味を持ったイベントや活動には、とにかく参加するようになりました。
部活にも所属していましたが、徐々に両立を難しく感じるようになったので、部活は退部し、学外の活動に軸足が移っていって。いろいろなものに挑戦するようになって、1年生の後半になると、予定が「学外のイベントで埋もれている」ということがたくさんありました(笑)。
そして1年生の年末頃に、また大きな挑戦に挑むことに決めたんです。
——どんな挑戦だったんですか?
先生が紹介してくれた学外のプロジェクト、docomoSTARTUPから生まれた、「働くこと」に不安を持つ高校生たちが、社会や仕事、自分について考えを深め、スキルを磨くための場「はたらく部」と、立命館大学・立命館宇治高等学校が開催した「起業キャンプ」に参加したことです。
茨木市にある立命館大学のキャンパスで、2泊3日で新規事業を考えるという企画で、起業家の方の基調講演を聞いたり、ほかの学校から参加している高校生たちとグループになって起業の案を考えてブラッシュアップしていき、最終的に大舞台でプレゼンするというプログラムでした。
かなりの量の知識を学び、スキルを身につけながら自分たちで考えて、指摘をもらって、もっといいビジネスアイデアを作るにはどうしたらいいかを話し合いました。すごくエネルギーを消費するので大変でしたが、僕の場合は好奇心が勝って頑張れたし、楽しすぎたんですよね。
やるからには優勝を目指して頑張って、結果、僕のグループは12チームのうち銀賞でした。悔しかったけど、充実感もあったし同時にうれしさも感じました。本当に刺激的で、これからもっと頑張ろうって思ったし、3日間だったけど1年くらいのモノを得たような印象的な体験でした。
それを経て今は、生徒会実行部 文化祭担当の副部長や2つの学生団体の運営、フリースクールや学童のボランティアの活動に没頭しています。
授業を通して、クラス全体の成長を実感した
——学校内外のさまざまな活動に「没頭している」と言えるくらい、充実しているんですね。創造コースの授業で印象的なものはありますか?
表現コミュニケーションの授業ですね。この授業は言葉の通り、自分を表現するプログラムが多いんですね。1年の頃はダンスや体を使った表現活動に取り組むことが多くて、自分の性格的にすごく苦手意識がありました。最後の方は、苦手ながらも、もう開き直って楽しくやってはいたんですけど(笑)。
創造コースでは学年ごとに大きなテーマが設定されていて、1年は「自分」、2年は「他者」、3年でもっと広く「社会」と変遷していきます。
表現コミュニケーションの授業でも、1年のときは一人で取り組む内容が多かったんですが、2年になって「他者」がテーマになった瞬間から、対話を基礎的な内容から学んだり、人と関わりながら取り組むプログラムに変わりました。グループワークが好きな僕としては、うれしかったですね。
そのなかで「挨拶」というプロジェクトがありました。クラスの全員が参加する寸劇を、30分間でゼロから作りあげるというもので、条件は1つ、最後に「おはようございます」で終わること。その一言につながる話をみんなで作るんですけど、全部で8回取り組んで、毎回違う劇が出来上がっていくのがすごく楽しかったです。
劇で表現することも得意ではないけど、自分の役は全うしようと思っていました。3分クッキングみたいな内容の回では、料理する役の人以外は、食材や調味料の役になろうと決めて、僕も調味料役になって変な踊りをしました。恥ずかしかったけど、挑戦も多かったなと振り返って思います。
——おもしろいプロジェクトですね。
他者とどのようにうまく関わり合っていくかという、クラスの協働スキルを高めることが目的のプロジェクトだったんですが、終わってみて納得しました。
創造コースでは、文化祭や体育祭もそうだし、クラスの全員で話し合って決める場面が結構あって。自分の意見をしっかり持っている人が多いし主張もするので、時間内に決められないくらいぶつかったり、暗い空気になることも多くて、クラスで決め事をする時間が、実はあまり好きではなかったんです。
このプロジェクトでも、はじめの頃はなかなか30分で完成させることができませんでした。先生が毎回フィードバックをくれて、それぞれが気づくこともあったし、もっと大きな視点、クラスとしてのあり方として気づかされることも多くありました。
徐々に、一人ひとりが時間を意識しながら取り組んだり、それぞれが持っている役割を果たすようになっていって、特に最後の2回はすごくいい雰囲気でした。僕を含めて全員の意識が変わって、クラスとして成長した実感があります。
自分の強みを人のために使って、世の中を変えていきたい
——木谷さんが学外の活動にも没頭されているのには、どのような思いがあるのでしょうか?
僕自身が常に、「やりたいことをやる」ということを大事にしています。僕は勉強も好きな方だけど、学年が進めば勉強は難しくなるし、課題も増えて嫌になることもある。中学のままの僕だったら課題も全部ちゃんとやっていたと思うんですけど、今はすっぽかすことも多いです。
皆もそうすべきとは思わないけど、今の僕はそれでいいと思っているところがあって。わざわざやりたいことを我慢する必要はないんじゃないかという考えになりました。僕が学外の活動に専念するために部活を辞めたことについても、ネガティブに捉えることもできるけど、僕にとっては今の自分であるための大きな一歩だったんですよね。
いろいろな学生の方と出会って話していると、今の学生は結構縛られるものが多くて、本当はやりたいことがあってもできない状況があるんだなと感じました。
そういう人たちを支えられるようになりたいと思って、「やりたいことをやる」という理念の学生団体を運営しています。
——学外のプロジェクト参加、ご自身で立ち上げた団体の運営、とたくさんのことにチャレンジされているのですね。それだけに留まらず、フリースクールや学童保育のボランティアにも関わっているのは、なぜでしょうか?
僕自身、中学生の頃から友人から相談を持ちかけられるということがよくありました。相談といっても恋愛や勉強のことだけではなく、学校に行きづらくなってしまったり、人間関係に悩んで精神的に悩んだりと、深刻な相談も何度かありました。
自分はそのような立場に置かれたことがなく、その人の気持ちを全部理解できるわけではありません。けれども、話を聞いて寄り添うことはできます。自分のできる最大限のことをして、何か1つでも、どんな些細なことでも、その人の力になりたいと考えていたからです。これまで大切に育ててもらった母に似た、良心からきているのだと思います。
あるとき、いじめや不登校を経験した子のニュースを見て、その周りにいる大人の対応をあり得ないと怒りを覚えることもありました。大人では難しいことも、高校生である僕のように年齢的に近い立場だからこその目線を活かして、子どもたちの力になれることもあるんじゃないかと思い、フリースクールのボランティアに参加するようになりました。
活動の中でふと思い出したことがあります。実は僕たち創造コース2期生のうち、何人かが不登校を経験しているのですが、今は皆、高校に来ています。小中学校には通っていなかった子も、風邪で休むことはあれど、毎日学校に通っている。
具体的に何がそうさせているのかという答えはまだ見つけられていないけど、創造コースに共通する魅力があるからだと思うし、「このコースをもっと広めていきたいね」とクラスメイトとも話しています。
——どんな人に創造コースを薦めたいですか?
創造コースは全学年共通して個性的な人が多くて、それが創造コースの魅力でもあります。でも個性のある人って今の中学校とかだとやっぱり浮いてしまうし、その結果として学校に行けなくなるなんてこともあると思うんです。
それが嫌で無理に多数派に溶け込もうとしたり、実際に同調圧力のようなものを感じて自分の個性を隠したり。それを気にしないでいることって、今の小学校・中学校だと難しいと思うんですよね。
今創造コースにいる人たちも、中学生のときは自分の個性を隠していたかもしれないけど、入学して変わったことが絶対あると思うんです。
自分の中に何かを持ってる人はもちろん、まだその何かが見つかってないという人も、今の自分を変えたい人や何かに挑戦してみたい人にとっては、いい場所だと思います。
自分自身、「個性を隠したり内気で否定的な自分」から脱却して「新しい自分」と出会うことができました。
——それぞれが自分らしくいられる学び場に、ぜひ多くの方に興味を持ってもらいたいですね!最後に、木谷さんが今どんな未来を思い描いているのか、聞かせてもらえますか?
僕が一番課題に感じているのが未成年の自殺者数が増えていることで、この現状を変えていくために、いじめとか不登校の領域に自分の力を使っていきたいと思っています。
当事者じゃないからこその目線や、僕の強みの寄り添う力や行動力で、世の中を変えるような大きなことをしたいと思っています。
行動力がついたのも、周りの人からの影響や、今の恵まれた環境のおかげだと思っているので、その恩を返せるように、自分ができることを見つけてやっていきたいです。
僕は、自分のことがあまり好きではないんですけど、嫌いな部分は自分をもっと成長させることができる可能性だとも思っているので、満足しないで自分に厳しくいたいです。