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走りの奥深さを解析したい。創造コースと陸上経験が育んだ飽くなき探究心を携えて、いざ大学へ!
生徒の世界を広げ、深め、創造へとつなげる追手門学院高校独自の「創造コース」。プロジェクトの学びを中心に、生徒たちは自分の世界を最大限に表現し、創造に挑む3年間を過ごします。2022年4月、当時新設コースに入学した1期生が、2025年3月、卒業します。
ひときわユニークな学校生活を送ってきた創造コース生たちは、どんな進路を選んでいるのでしょうか?
今回は、卒業を目前に控える高校3年生、竹田津圭史(たけたづよしふみ)さんにお話を聞きました!
走りの奥深さに魅せられて決めた進学先
ーー竹田津さんは3年間陸上部に所属し、部活に打ち込んだそうですね。何の競技の選手をされていたのでしょうか?
自分は「800メートル走」の選手をしてきました。陸上競技と一言で言ってもさまざまあります。800メートル走は「中距離走」と分類される競技で、1回のレースにかかる時間は、2分間。
短距離走だと数十秒と短く、長距離走だと10分以上のものがたくさんあり、観戦時間が長い。でも800メートル走の2分程度であれば、1つの試合の中で駆け引きが透けて見えてくるので、飽きないから、個人的には一番おもしろい種目だと思っています。
あくまで一例ですが、最初の100メートルは自分のレーンを走り、他の選手と並ばないため、ペースが見えずに飛ばす人が多いです。100〜200メートルでは内側に入りポジション争いが始まり、ここで良い位置を取れるかが重要。200メートルを超えるとカーブに入り、置いていかれないよう走ります。300〜400メートルは直線で走りやすい区間ですが、レースのペースが決まる大事なポイント。疲労の影響が鍵を握ります。
残り1周になるとペースを上げる選手が増え、慣れた選手は300メートル手前からスパートをかけ、加速し始めます。そして残り200メートル、全員がダッシュ!最後の直線ではレーンなんて関係なく、散らばっていく迫力は圧巻です。800メートル走のこの「濃密な2分間」が、個人的に一番の魅力だと思っています。
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ーー陸上競技に魅了された竹田津さんが選んだ進学先について教えていただけますか?
進学先は、スポーツの動作解析を研究できる学部のある大学です。そこで、スポーツの動きや走りの研究をしたいと思っています。この学部を選んだ理由は、陸上部での経験がきっかけです。特に2つのターニングポイントがありました。
一つ目は高校1年生の冬。陸上部の顧問の先生に「走っている時腰を前に出す意識をしてみて」とアドバイスされ、それを意識しただけで推進力が劇的に変わりました。二つ目は高校2年生のとき。コーチが専門的な指導者の方に変わり、走る技術や理論をより細かく教えてもらえるようになりました。
その指導者の方に教えてもらったことで、ストライド・足の回転・足の設置・腕の振り方・レースの走り方といった走りの細かい要素に気づき、「走ることってシンプルながら、奥が深い!」と感じたんです。
ーー走りの奥深さを研究するために進学先を選んだのですね。
はい。いろいろな大学を調べたのですが、多くの大学では「運動をどのように指導するのか?」という指導の方法に重きが置かれているように感じました。でも自分が選んだ大学は「この動きにはどんな意味があるのか?」「どのように動いたらこのような結果になるのか?」という、動きそのものを深掘りして解析するような研究が進められていて。
正解が既に決まっているんじゃなくて、その正解をさらにグレードアップした正解にするために探究する、そんな研究ができるところが魅力でした。
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成長の瞬間を一緒に感じられる仕事がしたい
ーー走りを研究することで、将来どんな人になりたいと考えているのですか?
自分は「量より質を重視するコーチ」になりたいと思っています。個別指導の塾講師のように一人ひとりに教える感じの仕事に近いイメージです。
今のコーチが「走る量よりも質を重視する」という考え方で指導していて、それにすごく影響を受けました。若い頃は体力や若さで乗り切れることが多いですが、年齢を重ねると量を重視して練習することが難しくなります。それに対して、質を重視する指導を届けることができたら、年齢を重ねても競技に向き合い続けられるようになると思うんですよね。だから、自分もそういうコーチになりたいと思っています。
ーー走りを研究するだけではなく、将来教える仕事に関わりたいと考えているのですね。教える仕事をしてみたいと思ったきっかけはありますか?
ある放課後、クラスメイトに数学の「微分・積分」を教えた経験があるのですが、教えた相手が「数学が楽しくなった」と言ってくれました。また、別の人に教えたときも、親伝いに数学を教えてもらえてうれしかったと聞いたこともありました。
そのとき、自分が教えたことが役に立っているんだと実感できて、すごくうれしかったですね。人に教えるのっておもしろいなと思うきっかけになりました。
僕は数学は算数からの積み重ねが大事だと思っていて、過去どこかでつまづいた部分がそのままだと、うまく理解できないことが多いと思うんです。自分に質問してくる人は「何が分からないのかすら分かっていない状態」かもしれないから、根本的なところから一つ一つの手順を丁寧に伝えるようにしています。
それを積み重ねることによって、相手が自分で気づけるようになり、一気に成長する瞬間が訪れます。そんな成長の瞬間を一緒に経験できることがとてもうれしく思えたんです。また、教えている相手から鋭い質問を受けることで、自分の理解がさらに深まることもあります。それもまた教えることのいい部分だなと感じます。
こんなやり取り自体が自分にとって大きなやりがいだと感じたので、将来は、塾講師やスポーツコーチとして、こうした楽しさを仕事にできたら最高だなと思っています。
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「やりたい」と感じたときが一番のチャンス!
ーー大学には、総合型選抜で入学したそうですね。どのような試験だったのか、話せる範囲で教えていただけますか?
自分が受けた総合型選抜は、書面を提出する一次試験と、対面での二次試験がありました。一次試験は、志望理由書と「あなたがこれまでに経験した課題発見、解決のエピソード」を提出しました。
自分は高校1年生で参加した起業をテーマにした学校外での活動「ウィンターキャンプ」での経験をテーマに選び、作成しました。志望理由書の準備は余裕を持って進めたものの、最終的にはギリギリまで考え抜いて提出しました。
二次試験では、与えられたグラフを見て考察し、そのグラフから読み取れる課題を解決するためのプロジェクトを提案するプレゼンテーション(10分間)と、面接(15分間)が課されました。
課題内容が通知されるのは、試験日の1週間前。私はまず送られてきたグラフを印刷し、注目ポイントをマークしてから、アイデアを殴り書きしながら考えをまとめました。その後、先生や親と何度も相談し、プレゼンテーションのスライドを作成。修正を重ねて、4日間かけて完成させました。そこからはプレゼンテーションの練習に集中しました。
対面での面接は、試験の4~5日前に練習を始めました。いざ練習してみると自分自身が思っていた以上に上手く話せなくて、もっと早くから取り組むべきだったと後悔しました。でも当日までの間に、創造コースの先生方にたくさん練習に付き合っていただいたので、本番ではいつも通りの自分であまり緊張することなく話すことができました。先生方には本当に感謝しています。
ーー創造コースの3年間を振り返ってみて、ここでの学びを通じて自分の成長を感じる部分はどんなところですか?
創造コースでは、自分の意見を伝える機会が多く、そのスキルが磨かれたと感じます。さらにはグループでの活動が多いので、意見を伝えるだけでなく、状況に応じて自分が一歩引いて、集団の中での「いい塩梅」を探るあり方も身につけられたと思います。
創造コースで学ぶ中で、話の熱量や相手の真剣さから「これは芯のある意見だな」と感じたことがあったんです。例えば、普段は落ち着いて話す人が急に身振り手振りを交えて主張を始めたとき、それは芯のある意見だと思うんですね。
このような相手の細かな変化に気づき、それに合わせて柔軟に対応できるようになったことは自分にとって大きな成長だと考えています。
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ーー最後に、創造コースに興味がある中学生や保護者の方にメッセージをお願いします。
何かに挑戦することで必ず得られるものがあります。創造コースで学びたいと思っている人には、迷わずその道を進んでほしいですし、部活動や他の活動も楽しみながら、自分らしい経験を積んでほしいと思います。
創造コースの活動は僕にとって特別なものばかりでしたが、特別感を感じるあまりそこに慢心してしまっていたこともあったと振り返ります。実際に、他校の生徒と交流して「もっと自分自身で努力しなきゃいけない部分があるよな」と気づかされたことがありました。
創造コースの活動が特別なだけに、それだけに頼ると精神的に迷うこともありました。そんなときは、部活動が自分の助けになってくれていました。創造コースとはまた違う空間や時間を過ごすことで迷いが消えていって「また挑戦しよう」と思わせてもらいました。だから、部活動はもちろん、外部の活動にも積極的に参加してみるといいかもしれません。
何かに対して「やりたい」と感じたときが一番のチャンスだと思います。そんなタイミングが訪れたら、ぜひなるべく早く行動に移してほしいです。自分も「やりたい」と思って入った陸上部や、ウィンターキャンプへの参加が、結果として大きな成長につながりました。
逆に後悔していることもあって、創造コースの後輩と関わる機会を逃してしまったことです。だから今は、残りの期間で、後輩と関わる機会を得ようと頑張っています!
後悔しないためにも、「やりたい」と思ったことには、勇気を出して挑戦してほしいなと思います。がんばれ!!
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