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自分が望めば、なりたい自分になるチャンスに溢れる創造コース。身体を使った表現活動で、オープンマインドな姿勢を育みたい

創造コースの先生って、どんな先生がいるの?

そんな疑問に答えていく先生インタビュー!
今回は、創造コースの授業・表現コミュニケーションを担当する福岡 小百合先生に話を聞きました。


「自由に表現してもいいんだ」という自己開示の扉を開く

ーー福岡さんは追手門学院の教員になられて10年目とのこと。現在は、創造コースの「表現コミュニケーション」という授業を担当されているそうですね。これはどのような授業なのでしょうか?

表現コミュニケーション、略して「表コミ」は、人との関わりや学びの土台となる「身体」を育む授業です。

ダンスや演劇などの声や身体を使った表現活動を通じて、自分や他者への理解を深め、つながり合うための方法を考え、お互いの違いを活かし合う能力を育むことを目標にしています。

ーー授業では具体的にどんなことに取り組むのですか?

まず初めは、音楽や他者との接触を通して、自分の身体に意識的になることや、人前で動いてみる経験をワークの中で少しずつ重ねていきます。急にダンスを踊りましょうとなると、恥ずかしさが勝ってしまうので、そこに至るまでの過程を丁寧に時間をかけて進めます。

例えば、1対1になって、自分が感じていることを身体で表現して、相手にそれを見てもらう、というワークがあります。観察する側は、そこに意味を読み取ろうとしなくていいから、どういう動きをしているんだろうということに興味を持って見てみたり、肯定したりします。正解はないので、とにかく表現者が感じていることをただ受け止めることがすごく大事になります。

これは、人と人とのつながりにおいても同じですよね。正しいとか間違っているとかではなくて、あなたはそう思ったんだね、ということを受け止めるだけでいい。そんな経験を、なるべく丁寧にたくさん重ねていくと、「自由に表現してもいいんだ」という自己開示の扉がちょっとずつ開いていくんです。その段階を3カ月ほどかけてやっていきます。

お話を聞いた 福岡小百合さん

ーー身体表現という方法で、時間をかけて自己開示できるようにしていくということなのですね。

その通りです。2年生くらいになると、子どもたちの自己開示の扉は結構開いてきます。2年生では他者に体重を預けるというワークをするのですが、他者に体重を預けるのって、怖いし不安ですよね。本当に相手を信頼していないと預けられません。そうしたワークも、2年生では軽々とできていました。

このような、体と体の距離が縮まるような物理的なアプローチを重ねていく中で、少しずつ、後付けで心が柔らかくなったり相手を信頼することにつながっていったりするのだと思います。

「自分を客観的に見てくれて、肯定してくれる存在」になりたかった

ーー表現コミュニケーションは創造コースならではのユニークな授業だと思いますが、もともと、福岡さんご自身も身体を使った表現活動に取り組まれてきたのですか?

私の人生の軸として、ダンスと教育がありました。
大学は教員養成課程の体育専攻で、ダンス部に所属していました。4年間で、バリバリのロッキングやヒップホップから、バレエに近いものや民族的なダンスまで、ほぼオールジャンル、幅広く経験しました。その経験は今にもつながっている気がします。

大学卒業後は就職も考えましたが、自分がダンサーとして活動したいという思いと、大学4年生のときに出会った舞踊学に興味を持ったことから、大学院に進学しました。というのも、舞踊学は、自分がこれまでたくさんのダンスで経験してきたことが全部言語化されて実証されていて、すごくおもしろみを感じました。

その一方で、いわゆるアートの世界のダンスと、学校の授業の中でやるダンスにはすごく差があることに違和感を抱いて...。もっと今の時代に合ったダンス教育を考えたいという思いで大学院に通っていました。

その後、たまたま追手門学院高校が「表現コミュニケーションコース(※)」を立ち上げるという話を知り、そのタイミングで追手門学院に来たという経緯です。

(※)「表現活動を通してコミュニケーション能力を育成する」という方針のもと、2014年に追手門学院高等学校に新設されたコース。現在は新規生徒募集を停止している。

ーーダンスへの探究心が強かったのですね。人生の軸がダンスと教育とのことですが、先生になろうと思ったのはどうしてだったのでしょうか?

自分の良い側面を、先生に引き出してもらったという経験が多かったのだと思います。年長のときの先生も、小学4年生のときの先生も、「さゆちゃん、それ皆の前でやってみたら?」と言ってくれて。高校や大学時代のダンス部の先生も、私が無自覚に持っていた能力をすごくピックアップしてくれたんです。

そうやって受け入れられることがすごくうれしかったし、自分はダンスができるのかもしれない、ダンスが好きなのかもしれない、ということに気づいたんです。

そんな経験から、自分自身を客観的に見てくれて、いいねと肯定してくれる存在というのは、すごく大事だなと思ったんですよね。自分もそんな存在になりたいと思ったことが、教員になろうと思ったきっかけです。

それと、小さい頃から「皆を笑顔にすること」というのを、将来の夢として書いていたんです。今、こうしてダンスを使って授業をしているのも、根本的には子どもたちに「今日も頑張れそう」とか「今日は良い日だったな」と感じて、1日1日を幸福感で終えられるといいなという思いが強いからだと思います。

人生に対するオーナーシップを持って、なりたい自分に向かってほしい

ーー授業をデザインしていく上で、福岡さんが大切にしていることや考え方について教えてください。

私は、教科学習の前段階にある、人間が人間らしく生活していくためには、どんなスタンスでいればいいかといったことを、表現活動を通して伝えていきたいと思っているんです。

例えば、日本人はクローズマインドだと思われがちです。海外で街を歩くとき、いろいろな人と目が合うし、知らない人でもエレベーターで声をかけられたりしますが、それは、人として普遍的な、オープンマインドな姿勢からくるものだと思います。でも、日本では知らない人とはなるべく目を合わさないようにするし、エレベーターで一緒になった知らない人に話しかけるなんてこともほとんどしませんよね。そうしたクローズマインドでいることは、世界基準で見たときにはあまり受け入れられません。逆に目が合わないことは、何か隠し事をしているんじゃないかと思われたりします。

そうした、人が人とどう関わっていくかといったコミュニケーションの姿勢や素地といった部分を、もっと学校教育の中でも実践的に教えていかなければいけないなと強く思っています。

ーー昔に比べると、現代は人との関わりが希薄になってきているとも言いますよね。

今は核家族が当たり前になり、日常の中で接する人が本当に限られますよね。人との関わり方を実践的に学ぶ場が少なくなってしまっている。だから子どもたちがいざ人間関係の問題にぶつかったときに、対応できなくなってしまう。学校は、いろいろな家庭環境の子や特性を持った子が集まっている、いわば小さな社会なので、学校をコミュニケーションを学ぶ場所にするのが一番良いんじゃないかと、すごく感じているんです。

例えば友だちと何か問題が起こったとき、「直接話せばいいのに」と思っても、今の高校生にとってはそんなに簡単なことではないらしいんですよね。ときにはけんかもあっていいと思いますが、今の子はけんかの経験もなかったりするんです。

なので、自分の意見を言葉にすることや伝え合うこと、「今、目が合って伝え合ったよね!」みたいな瞬間をたくさん経験して人と関わる体験知を増やしてほしいんです。人間が本来持っているさまざまな感覚を想起させていくということを、私はもっと教育の中でしていきたいと思っています。

ーー「創造コースってどんなコースですか?」と聞かれたら、福岡さんは何と答えますか?

難しいですが、円形から放射状に線が放たれている分度器、でしょうか。さまざまな教科を統合していることや、子どもたちの可能性を受け止めるということが円形のイメージで、いろいろな分野に飛んでいけるきっかけやチャンスがあるという意味で、放射状に広がっているイメージです。

創造コースは、創設されてまだ2年目です。まだまだ、創造コースとして何を目指すべきかというコンセプトやロードマップを示していく余地はあると思いますが、今は敢えて決め切らずに、まずは入学してくる子どもたちのニーズや今いる生徒たちの考えを尊重することに重きを置いています。

ーー最後に、これから入学を考えている人たちにメッセージをお願いします。

創造コースは、自分が望めば、なりたい姿になれる場所だと思います。そういうチャンスはたくさん転がっている。ただ、学びは自分でつかみ取らないと意味がありません。誰かがどうにかしてくれると思っているうちはダメで、自分の人生を自分でどうにかするぞというオーナーシップを持っていないと、難しい。

自分の理想や夢を叶えられる環境は整っていると思うので、なりたい自分がある人はもちろんのこと、まだやりたいことが明確になくても、これから探したい、自分らしい人生を自分で決めたいと思っている人には、ぜひ来ていただきたいですね。