夢みたいなことを敢えてやろう!創造コースは、数字で測れない、一人ひとりが持つ特性を認めてくれる場所。
創造コースには、どんな先輩たちがいるの?
そんな疑問に答えていく生徒インタビュー!
今回は、創造コース3年生の許 綾音(きょ あやね)さんに話を聞きました!
良い・悪いではなく、特徴として捉える
——綾音さんが、創造コースに入学するまでのことを聞かせてもらえますか?
私は普通の公立の小学校、中学校に通っていて、当時は、学校は社会とつながっていない閉鎖された空間だなと感じていました。社会と分断された環境で勉強することに何の意味があるか分からなかったし、一方的に数字で評価されることにも違和感がありました。
人は一人ひとり違っていて、それぞれに良さがあるはずなのに、同じ問題が載ったテストを解いて、同じ採点方法で一方的に評価されてしまう。そういう環境にいると、友達も徐々にテストの点数に執着するようになっていって、数字以外のことがどうでも良くなっていくんですよね。
本当は、数字では評価しにくい優しさとか人間的な面を育てることが大切なはずなのに、これっておかしいんじゃないかなと思いながら学校生活を送っていました。
その頃通っていた塾が、結構クレイジーな感じだったんです。国語の授業であれば最初はとにかく音読をする。だから私、今でも夏目漱石の『坊ちゃん』や芥川龍之介の『羅生門』、島崎藤村『初恋』の冒頭を暗唱できるんですよ。その塾のグループには建築や農園の会社があって、週1で鍬(くわ)を持って農業もしていました。
ほかにも生徒だけじゃなくて、塾を経営している会社の人やグループ会社の人、一般の人も参加して、今の社会状況について討論したこともあったし、生徒が仕事の一部を担う仕事塾というプログラムで、小学校低学年の子たちに私が授業をしたこともありました。
塾での体験はどれも強烈で、それまで受けてきた教育とは全然違っていて本当に楽しかったです。その塾の先生が「おもしろいコースができるらしいよ」と教えてくれたのが創造コースでした。体験会に行ってみたら、グループワークがあるし、定期テストはないって言うし、自分が求める学びに近そうだなと思って入学しました。
——入学してどうでしたか?
思っていた通りの、私がしたかった学びでした。グループ課題が多いので、リーダーシップとか考えの方向性とか、数字で評価できない一人ひとりの特性を先生たちがちゃんと評価してくれている。
また、先生だけじゃなくて、グループで一緒になる友達もそういう部分を見てくれていて、すごく心地いい環境だなって思っています。
——何度も取材をさせていただいているのですが、創造コースの生徒さんたちは、お互いの良いところをたくさん知っていますよね。
そうですね。グループワークをしたり、みんなで考えを共有する時間があって、考え方や自然と担う役割について、この人はこうだな、私はこうだなと照らし合わせる機会が多いから、その人の特性が見えてきやすいんだと思います。
ただ最近は、良いところという見方じゃなくて、特徴として捉えるようになってきました。例えば、私には人をまとめるとか、深いところまで考えるという特性があって、これはもちろん良いところでもあるけど、例えば考えすぎて億劫になることもあって、行きすぎると良くない面もありますよね。
そんな風に良い・悪いじゃなくて、ほかの人にはないその人だけが持っている特性だと思うようになったし、そういうものを周りの人にも自分に対しても、たくさん見つけられるようになっていると思います。
私たちは、本当は何でもできる
——創造コースの中で、好きな授業は何ですか?
生徒の間では好き嫌いが分かれますが、私は表現コミュニケーション(以下、表コミ)という授業が好きです。この授業は、創造コースにしかない授業で、ダンスや演劇などの声や身体を使った表現活動を通じて、自分や他者への理解を深めるような授業です。
表コミはオリジナルの授業ということもあり、先生たちが本当に頑張ってカリキュラムを作ってくれていることが、私には伝わってきているんですね。
表コミの学びは、どの教科も社会に役立つ力をつけられるような、「そもそも社会に出る上で何が必要か」「生きていく上で根本的に養わなければいけない力はどんなものか」が、すごく考え抜かれた授業だなと思っています。
この授業では特に、身体感覚といった自分自身の感覚や、リフレクション(振り返り)を大事にしていて、テストのように数字として表すことができない部分を大事にする科目でもあります。
例えば、ある年度のはじめと終わりに100問近くあるアンケートに答えたということがありました。2回のアンケートを比べてみることで、自分の成長が自分で実感できるような機会を作ってくれたりとか。
表コミの先生が大学に戻って研究を続けていらっしゃったり、目に見えない成長を何とか可視化して、私たちの成長を証明しようと頑張ってくれている、そんな先生方の熱さも含めて好きなんですよね。
——お話を聞いていると、綾音さんは先生側の視点に立って学びを見ているように感じたのですが、それはなぜでしょうか?
入学する前は、自分が教育を「受ける側」の視点で、「いい教育とは何か」を考えていました。でも、創造コースでいろいろな教育を受けたり、入学を検討している中学生たちが集まる体験会を手伝ったりするなかで、私の中に、教育を「届ける側」の視点がどんどん大きくなってきているのを感じています。
——どんなきっかけがあったんですか?
大きなターニングポイントの一つはタイガーモブという団体が主催しているプログラムで、高校2年生の夏に10日間ほどザンビアに行ったことです。
もともと生命や医学に興味があったのですが、このプログラムのテーマがまさに、生命を経済、医療、教育それぞれの側面から捉えるというものだったんです。
ザンビアは貧困が理由で亡くなってしまう人が多くて、貧困から脱出するために銅を掘る工業を国として頑張っています。でもそれが環境を汚したり、動物の命を奪っている。人間の命と、動物の命と、環境とをどうバランスを取るのか。それを考えるには教育のアプローチが必要なんじゃないかと、現地で奮闘している日本人女性に会いました。
そこで今まで生命や医学の方に興味があると思ってたのですが、実は教育の方が自分は好きだし、可能性を強く感じていることに気づいたんです。
それからプログラムの中では、ストリートチルドレンと対話するという内容もありました。プログラム自体もとても考えさせられるものだったんですけど、印象に残っているのが、ザンビアでの食事の体験でした。
ある日「今日の夕食は鶏肉です」と言われまして。でも鶏を食べるには、めちゃくちゃ広い庭で野生の鳥を追いかけて捕まえなきゃいけなかったんです。その鶏を自分たちでさばいて食べるんですよ。
日本では考えられないサバイバルな生活で、シャワーはお湯が出ないし、トイレは流れませんでした。そこでも人は生活しているんですよね。衝撃的でしたが、その体験を通して、やろうと思えば私たちも生活できるんだって実感したんです。
できないと思っているだけで、私たちは本当は何でもできるんだって思えたし、学校という小さな空間から世界まで、自分が行ける場所が広がったのを感じて、私にとってすごく大きなターニングポイントになりました。
教育を受ける側から届ける側に
——ザンビアでは、価値観が変わる大きな体験をされたんですね。そこから変化はありましたか?
そうですね。昔の私みたいに、ある意味では閉じた空間である学校に毎日通うことに閉塞感を感じていたり、本当はやってみたいことがあるのに、学校のルールや点数の評価に縛られて「どうせできない」と無気力になっている人は少なくないと思うんです。
でも本当は、私たちには何でもできる力がある。夢みたいなことを敢えてやろうよ!って伝えたくて。
それで今年のゴールデンウィークに、タクトピアという企業と創造コースの生徒で一緒に作った「点数で評価される現代の教育を変えよう」というテーマのイベントに、クラスメイト2人と私のチームでワークショップを行いました。
私たちのワークショップは、多目的室にめちゃくちゃでっかい紙を敷いて、そこにインクをぶちまけたり、絵を描いたり、アートするという内容でした。これって誰もが一度はやってみたいと考えることだと思うんですけど、実際にやったことがある人は少ないですよね。
そんな夢みたいなことでも、頑張れば叶えられる。そして、アートという表現方法で点数の評価からも自由になろう!という思いで企画しました。
——まさに、綾音さんが教育を「届ける側」になったイベントだったのですね。
そうですね。ずっと教育を受ける側から考えてきたけど、今後は教育を届ける側に自分がなっていけたらなと、今は思っています。
いろいろな国の教育を見て、日本に帰ってきて、学校に戻りたい。そして、ゆくゆくは学校を作って、自分が目指す教育をこの手で作ってみたいと思っています。これが私の天命かもしれないと思うし、その未来に今すごくワクワクしています。
もともと学校が嫌いだった自分が、大人になって学校に戻ってこようと思うなんて想像もしていなくて、それ自体が大きな変化だと思っています。
学校が嫌いだったと言いましたが、嫌いって本当は興味があるということの裏返しかもしれない。このコースに来ていなかったら、こんなことに気づかずに生きていたかもしれないし、ザンビアにも行っていないと思うと、創造コースに来て本当によかったなと思いますね。