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創造コースにいる自分を、誇りに思える。ここは他者との“違い”を知り、自分の価値観と出会える場所。

創造コースには、どんな先輩たちがいるの?
そんな疑問に答えていく生徒インタビュー!今回は、創造コース3年生の山崎 凛(やまさき りん)さんに話を聞きました。

自己理解のための“語れるすごろく”を開発中

ーー山崎さんは今、どんなことに夢中になっていますか?

趣味の写真と、ちょうど創造コースのプロジェクトをきっかけに始めた自己理解学習のための“語れるすごろく”を仲間3人と開発中(取材当時)で、授業時間以外も放課後に集まって手を動かしたり、たまに休日にzoomをつないで集まったりしながら制作を進めています。

近々クラウドファンディングをする予定(取材当時)で、まさに今はそのための資料作りをしているところです。

ーー自己理解学習のための“語れるすごろく”、おもしろそうですね。どのようなものか教えてください。

自分の価値観を知るためには、人との違いを知り、自分自身と照らし合わせて考えるアプローチが楽しく簡単にできる方法なのかなと私たちは考えました。

“語れるすごろく”は、「自分の価値観を知る」ことと、「他者との“違い”を知る」というループを、私たちが考えたオリジナルのカードシステムで回しながら遊ぶすごろくです。

デザインから印刷まで、全て自分たちで作りました。

山崎さんらが開発した「語れるすごろく」

すごろくのマスには、TALK、EVENT、STOPの3種類あり、TALKとEVENTには、TALKカードとEVENTカードという連動するカードがあります。

例えば、TALKマスに止まったら、TALKカードを引いて、そこに書かれているお題についてプレイヤーみんなで“対話”するという遊び方です。

ーーカードにはどんなお題が書かれているのですか?

例えばTALKカードには、性質・価値観・経験という、“自分”を構成する3つの要素を意識した3種のお題が載っています。経験だったら、「一番感動した出来事は?」など、文字通り経験を聞くようなお題。

性質は、「自分の感動のしやすさや怒りっぽさを1から10で表すと?」など、言葉じゃ表現できない部分を数字で表してもらうようなお題があったりします。価値観に関するものだと、「話しやすいのは年上?年下?」など、自分の価値観や判断基準をストレートに聞いたり、過去の経験を聞きながら炙り出していくようなお題になっています。

「語れるすごろく」のTALKカードとEVENTカード

ーーEVENTカードやSTOPマスも気になります。

EVENTカードは、一致したら進む、一致しなかったら戻る“ミニゲーム”のカードで、これにもお題が書かれています。

例えば「右隣の人と漫才するならどっちがボケ?」と書かれたカードを引いたら、まずはお互い無言で考えて、決まったらせーので指をさします。2人の答えが一致すれば進み、一致しなかったら戻ります。

ゲーム性を持たせながらも、自分から見る自分と、他人から見る自分って意外と違うよねという認識のズレを楽しんでもらいたいなと思って考案したカードです。

最後にSTOPマスですが、これはその名の通り、必ず一時停止して、今までの対話を振り返り、“思考を整理”するためのマスです。言い換えると、リフレクションのマスですね。対話の中で気づいたこと、改めて思ったことなど何でもOKなので、このマスに止まった人が一人でしゃべり、全員で耳を傾けます。

ーーSTOPマスは、マスの中に問いが書いてあるんですね。

はい。実はここにもちょっとした工夫があって、スタート付近のSTOPマスには、「自分の直したいところはどこ?」という問いを置いていて、ゴール付近では「自分の好きなところはどこ?」と聞いているんです。どうしてかというと、大体みんな、自分の好きなところを聞かれてもなかなか出てこないけれど、自分の直したいところはすぐに思いつくんですよね。

なので、先に答えやすい問いを置いて、ゴールに向かうまでの過程で繰り広げられるいろいろな対話を経て、最後の方に自分の好きなところについて考え、思考を整理して答えられるようにする設計にしました。

この、他者を知って自分を知るという対話のループを何度も回すことが自己理解へとつながるという仕組みです。

いろいろな教科の学びがつながる感覚がおもしろい

ーー創造コース生らしい、ユニークな発想ですね。このすごろくのアイデアはどこから着想されたのですか?

きっかけは、2年生のときに行った高知県への探究旅行(創造コースの修学旅行)です。現地で、地元の方に高知県の魅力を知ってもらう目的で、「高知る(こうちる)」というすごろくを作りました。

そのときに、地元の方に「これは高知のことだけじゃなくて、自分のことも知れるね」と言われ、それがとても印象的で。そこで、自己理解ができるすごろくという方向性で作っていこうという話になり、今の形になりました。

ーー「自己理解につながる」という一言に反応できるということは、創造コースにいる皆さんが自己理解の大切さについてよく分かっているからとも言えると思います。山崎さんが初めて創造コースを知ったときのことも教えてください。

創造コースのことは、母がおもしろそうなコースがあると教えてくれて知りました。でも最初は、なんか変なところの情報を持ってきたなと思い、特別強い気持ちで入りたいとは思っていませんでした(笑)。

でもまぁとりあえず行ってみよう、と軽い気持ちで体験会に行ったときに、“バランス”をテーマにいろいろな教科の授業を受けて、最後にそれらを統合して各自が考える“バランス”を持ち寄る、というようなことをしたんです。

いろいろな教科の学びがつながるような感覚を体験して、すごくおもしろかった。「創造コース、楽しかったな」という感覚があり、入学を決めました。

ーー創造コースに入学してから今までを振り返ってみて、どんなことを感じていますか?

入学した直後から楽しく登校していました。ただ、創造コースではグループワークが多くよく喋るので、授業中もワイワイガヤガヤしているんですよね。しばらく経つと、他のコースの友達から「創造コースうるさい」と言われることもあって、創造コースが少し嫌になった時期も正直ありました。

でも、1年生の学年末に取り組んだアートプロジェクトを通して、創造コースに入ったからこそ自分や他人の価値観に気づくことができたような体験をして、そこからは創造コースにいる自分に誇りを持てるようになりました。

今は、創造コースに入学して良かったなと思っています。

自分の深層心理に気づき、具現化するプロジェクト

ーー創造コースで取り組んできた数々の授業やプロジェクトの中で、最も印象に残っているものはどんなことですか?

やはり、1年生の学年末のアートプロジェクトです。
実はこのプロジェクトの前に、表現コミュニケーションという授業で「自画像」のプロジェクトに取り組んでいました。

自分自身を表現することをテーマにしたプロジェクトで、みんな自分の負の部分について話すような時間があった中で、私はそういう話はしたくなくて、自分の好きな写真の話だったり、趣味の話ばかりしてその場をやり過ごしました。この「自画像」プロジェクトによって、他者からみた自分の印象が変わってしまうことが怖かったんです。

授業の当日、みんなのそうした話を聞きながら、自分は逃げたなという感覚がずっと残っていました。

「なぜ自分は変わるのが怖いんだろう?」

そんな問いを抱えながら、今度は学年末のアートプロジェクトが始まったんです。

アートプロジェクトは、何かの教科から素材を持ってきて、アート作品作りに取り組むことが条件だったのですが、ちょうどそのときの生物の授業で学んでいたのが、植物の遷移についてでした。

木が生えることによって、その下に生える草がなくなっていくといった話を聞きながら、私はこの植物の遷移の話と、「自分の変化」をテーマとして結びつけて考えたらいいんじゃないかと思い、自画像プロジェクトの続きのような感覚でアートプロジェクトに取り組んでみることにしたんです。

そうしたら、なぜ自分が変化することを怖れていたのか、その理由が分かりました。

ーーそれはどのような理由だったのでしょうか?

私は、変化をするということは、元あったものが無くなってしまうような感覚を抱いていたんだ、ということに気づきました。だから怖かったんだな、と。

でも、植生もそうですが、残るために変わっているんですよね。消えてしまうのではなくて、消えないために、環境に適応するために変わっているのだと考えると、変化って怖いものじゃないなと思えたんです。

そこに気づくことができたアートプロジェクトは、強く印象に残っています。最終的に、植物の遷移に見立てた歯車と、時間の概念を表す時計を、とても大きなキャンバスに描いた作品を作りました。

1年生のアートプロジェクトで制作した作品

あんなに怖かった「変化」が、今はこんなに楽しい

ーー山崎さんご自身の体験に紐づいた、とても深い気づきを具現化した作品になりましたね。

ありがとうございます。今は、「変化」に対する私の考えがもう少し変わっているんです。

もともと「変化は怖い」からスタートして、アートプロジェクトを通して「変化は怖くない」と思えて、さらにもう一度よく考えてみたら、私は実は「変化が好き」なんじゃないかと思っていて。 

私は四季がすごく好きで、季節の風景を写真にたくさん撮ったりするんですけど、四季とはつまり、自然の変化ですよね。変化が怖いとか言っていたけれど、よく考えたらずっと好きだったんじゃないか、と気づいて。

なので、3年生の卒業プロジェクトでは、アートプロジェクトのリメイク版のような形で、もう1回、今の自分が思う「変化」について表現してみたいなと思っています。

ーー創造コースも、気づけば3年生になり、入学した当時と比べると山崎さんの中にも大小さまざまな変化があったのではないですか?

そうですね。こうして今、メンバー3人と一緒にすごろくを開発していること自体が、自分にとっての大きな変化かなと思います。

私はもともとはグループワークが好きなタイプではなくて、どちらかというと個人ワークの方が楽しいと思っていましたし、何かを企画することについても、もっと得意な人がいるだろうから自分には関係ないと思っていました。

でも、気づいたら心の底から楽しんでいるし、企画をすることっておもしろいなという発見もあって。そんな自分自身の変化を感じています。

ーー最後に、卒業までの残りの期間、創造コースでやってみたいことがあれば教えてください。

一つは、先ほどお話したアートプロジェクトのリメイクと位置付けている卒業プロジェクト。もう一つは、せっかく創造コースのエキシビション(展示会)をするなら、自分が撮った写真を展示をしたり写真集にしたりして見せたいなという思いがあります。

もう一つ挙げるなら、卒業プロジェクトではアート作品に加えて、何かをデザインする課題もあって、創造コースのエキシビションのポスターやパンフレットを作らせてもらいたいなと思っています。

今回のすごろくデザインや、以前授業やイベントでポスターを作った際に、いろいろな人の意見を聞きながらデザインを考えていくプロセスがとても楽しかったので、楽しみながら挑戦できるんじゃないかなと思っています。